Tanti Anni Prima

雑食なエンジニアの本棚

【蔵書No. 25】ビジネス書のハードル | 世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた

 最近は読書にも慣れ、電車の通勤時間がそこそこ長いこともあって読書量が格段に増えてきた。だがその中でもビジネス書の量は圧倒的に少ない。非常に言い訳がましいかも知れないがその理由は、どのビジネス書も同じようなことを書いているように見えてしまう病にかかっているからだ。そのため書店でビジネス書コーナーを物色しても、中々手に取る気にならないのが現状であった。もし自分のようにビジネス書をどれから始めたらいいのか分からない人がいたら、本書をインデックス代わりにしてみるといいかも知れない。

読んだ本

・タイトル:世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた
・著者:永井孝尚

感想云々

 ビジネス書、というよりそもそも書籍において「ベストセラー」というのは一般的に10万部かららしい。ビジネス書の分野に限って言えば、これはもの凄く少ないことだと思うのだ(自分が言えた義理ではないのだが...)。ビジネス書にはとてつもない金言が数多く詰まっており、たったの2000円程度払うだけで成功者のノウハウを疑似体験できる。そう考えると、ビジネス書は非常にコスパがいい。そしてデータベースを見ると、日本だけで見ても就業者数は6700万人程度いる。就業者の分母に対して、読んでいる人口があまりにも少ないことになる。これは少々異常なことに思えるのだ。
 そういう話をすると「そもそもビジネス書なんて、マネジメントするようなポジションになって初めて読むものじゃないのか?」という声が聞こえてきそうである。ところがそうはいかない。例えば本書ではボクシングを引き合いに出しているのだが、ボクシングには然るべき戦いのセオリーがある。そのセオリーを学ばずに競技に挑むならば、それはボクシングとは言わず、ただの「ケンカ」になってしまう。ビジネスの世界だって同様である。ビジネスのセオリーをきちんと学んでいないビジネスパーソンは、ただのケンカ自慢と一緒なのだ。本書を読みつつ振り返ってみると、ビジネスのセオリーという概念をいかに自分が蔑ろにしていたか気付かされるのだ。そして、ビジネス書を読み始めるのは若ければ若いほどいい。どんな分野にも共通することだが、物事に初めて手をつける時、はじめに変なクセが付いてしまうと後から修正するのが難しい。一方で若いうちに正しいセオリーを身につければ、自転車に一度乗れるようになると歳を取っても乗り方を忘れないのと一緒で、自身の中で不変のものとなって長らく活きることになる。その長さが長いほど、その分価値が大きいというのは想像に難くないだろう。
 また読み手側が学生である等、現在ビジネス自体に関わりがない人にとっては「自分には関係ないな」と弾いてしまいそうな領域の話である。しかし自分はそんなことはないと考えている。これについては、もしドラがいい例だと思うのだ。もしドラ(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら)は今から15年前くらいに流行った小説である。主人公である女子高生のマネージャーがある日ドラッカーの「マネジメント」というビジネス本に出会う。その本に書いてある内容を自ら噛み砕き、マネージャーとして所属している野球部に反映させて甲子園出場を目指すというものである。その作品はあくまで部活の話であるが、そもそも人は規模の大小問わず「組織」の中で生きているものであって、そこには必ず人間関係が発生している。それは友人のコミュニティであったり、会社の同僚であったり、家族であったり様々だろう。一見ベクトルは違えど、企業でも部活でも家族でも「組織」という点で知っておくべき・おさえておくべき教養は一緒だと思うのだ。自分が組織や社会集団で何を考え、どう振る舞えばよいのか。そのヒント、もとい答えがビジネス書の中にはある。
 前述に加えて「そもそも活字がだめなんだけど...」という人もいるだろう。もちろん自分の周りにもたくさんいる。そんな人に対して、自分に言わせれば難しい本から挑戦し過ぎだと思うのだ。前述のドラッカーのマネジメントが同様に良い例だ。ドラッカーのマネジメントは長年に渡って読まれるベストセラーだが、その中身を一発で全て理解出来る人はそうそういないだろう(そんなことが出来る頭脳を持っていたら、会社員などすぐやめて専門家になるべきだ)。そんな一筋縄ではいかない専門書を解読することに対し、自分は美術館に行くマインドと同じだと考えている。何も知識を持たず丸腰で突撃していって、自分の直感・インスピレーションに頼るのも確かにいい。だが、絵画においてはその作品が作られた背景や技法、どんなアトリビュートが使われているかを知ってから挑んだほうが、実物を目にした時スッと頭に入ってくるだろう。裏を返せば、前提となるインプットが少しはないと、何が書かれているのかほぼ理解出来ずに終わってしまう。それは非常にもったいないことだ。その意味で、ビジネス書のような専門書を読みたいのなら、まずその指南書(もしくはさらにその指南書)から始めるべき、という考えが自分の中で強い。幸い今は「100分de名著」の所謂ムック本とか、本編を噛み砕いた解説本が世の中にたくさんある(なんならそこで完結してもいいとさえ思っている)。いきなり入試問題を解こうとせずに、練習問題から始めるべきなのだ。「そんな当たり前のことを言うな」と言われるかも知れない。だが、意外とこのステップで躓いている人は、決して少なくないと思うのである。

終わりに

 前述の感想で散々言ったものの、自分もそこまでビジネス書を読んでこなかった勢の立場である。反省もしているが、本書のようないい指南書に巡り合うことが出来た。本書に登場する本たちに価値があるかどうかは、とりあえず全部読んでから考えてみようと思う。どうか脳筋とか言わないで欲しい。


それでは。