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雑食なエンジニアの本棚

【蔵書No. 48】切れ味抜群の秀逸な返し | 帰ってきた生協の白石さん

 生協というのは殆どの大学に存在するだろうが、それを支えているスタッフのメンバーが認知されているところはかなり少なそうだ。とりわけ、本書の著者の白石さんほどとなると尚更だろう。実際、自分が通っていた大学にも生協はあるにはあった。ところがそこのスタッフとコミュニケーションを取るなんてことはほぼ無かった(家探しの際は非常にお世話になった)。だが、自分の大学生時代に生協が提供しているひとことカードに注目するようになったのは、ひとえに白石さんのおかげだろう。白石さんが在籍されている大学のみならず、自分の大学においてもシュールな質問と、それに対する秀逸な返しの応酬が絶えず、生協に足を運ぶたびに楽しみにしていたものである。最初の「生協の白石さん」が刊行されたのが2005年。あれから十数年が経ち、気がつけば2023年に復刻版(?)が刊行されていた。その間に自分の大学生時代も過ぎ去った。当時を懐かしむ感じで手に取ったのだが、復刻版もやっぱり面白かった。

感想云々

①相変わらず健在な白石さんの返し

 自分が他人と会話している時に何か少しでも面白い返しをしてやろうと思うようになったのは、前作の「生協の白石さん」が原点といっても過言ではない。ひとことカードという小さなスペースの中に、多すぎず少なすぎず、ウィットに富んだ表現が要所々々に織り交ぜられている。読んでいてクスッと笑えるレベルのちょうどいい温度感なのだ。中でも一番へぇと感心したのは野球部のくだりかも知れない。「野球部3人組で何かバズることができないか」という問いに対して、水戸黄門を引き合いに出して適切な回答を出しているのだ。水戸黄門でよく出てくる「印籠」と野球の「インロー」をかけたのだろう。実はこの言葉遊び、自分はかつて笑点の大喜利で見たことがあった。当時のその大喜利を白石さんが見ていたのかどうかはわからない。だが、白石さんはそんなマニアックな情報に積極的にアクセスしているからこそ、膨大なデータベースの中から回答を錬成できるのかも知れない。そんな白石さんの知識の源が垣間見えるような内容だった。

②どうしてこんなにも親しみやすいのか

 白石さんの秀逸なコメントに親近感が湧くのは、単にネタの幅広さだけではなさそうだ。確かに白石さんの物腰の柔らかさも手伝っているのかも知れない。ただそれに加え、心理学でいうミラーリング効果がうまく相乗効果になっている気がするのだ(本人は意識しているのかどうかわからないが...)。ミラーリング効果というのは、動作・言動を相手と同じにすることによって、相手に好感を持ってもらうための心理的な効果である(プロの方々、間違っていたらすみません)。白石さんの場合、質問者のスタイルに合わせて回答することが多い。業界用語モリモリの質問に対しては同じようにモリモリで返し、相手がそれなりの文章のボリュームでくれば、同じようにそれなりのボリュームで返す(たまに長い悩みに対してバサリと一言で終わらせる)。見方によってはただのかぶせのボケの部分もあるのだが、適度に相手の温度に合わせて返してあげることが、白石さんに対する親近感ひいては好感につながっているのかも知れない。天然でこれを理解しているのならば、とんでもないお方だ。

終わりに

 大学は学生同士がコミュニティをつくって完結しているケースが多いと思うのだが、その中で学生とスタッフのホットラインがあるのはよく考えたら凄いことだ。白石さんのひとことカードからしか得られない栄養があるので、これからもぜひ活躍されてほしい。そして第三弾をぜひ...


それでは。