今まで仕事をしてきて、期日以内にきっちり完了できたタスクはどのくらいあるのだろうか。振り返って見ると、一瞬で終わるような小さなタスクは別として、期日に間に合わず期限の延長を申し出た経験が結構ある。別に手を抜いたり、さぼったりしているわけではない。しかし当初決めたスケジュールには次々と横槍が入り、気がつけば多くのタスクを抱えた状態で雁字搦めになってしまっているのだ。そんな自分と同じような悩みを持つ人にとって、本書はかなり直球なタイトルで非常に刺さることと思う。仕事好きの人もそうでない人も、自分が今取り掛かっている仕事をスムーズに終わらせたいという気持ちは同じなのではないだろうか。
読んだ本
・タイトル:なぜ、あなたの仕事は終わらないのか
・著者:中島 聡
感想云々
①ロケットスタートの極意
本書の中で登場する「ロケットスタート」とはその言葉通り、タスクに取り掛かる際、序盤に全力を費やすことである。一見ただの根性論やマインドセットのように思えるかも知れない。しかし、このロケットスタートには普段見落としがち(というか自分が陥っていた)な2つの要素が含まれている。それは「スケジュールの見積の調査期間を設けること」と「流しの期間を設けること」だ。
自分がそうなのだが、タスクがどれくらいで終わるかを見積もるのは、大体そのタスクが渡された瞬間だ。その場で「大体このくらいで終わるかな...」と皮算用して、その場で上司にもざっくりと回答する(そこに根拠はあまり存在していない)。もちろん別途スケジュール立案もするのだが、その不明瞭なスケジュールの見積こそ、リスクをはらんでいたのだ。今までの経験を基に、感覚で即座に「~日くらいで終わりますね」と定量的に回答できることも確かに大事だ。しかし、上司陣は思った以上に皮算用の方を信用してきたりする(自分の職場だけなのかも知れないが...)。そうなると、なにか不確実なことが起こった瞬間にスケジュールにずれが生じ、何度も修正・調整する羽目になる。結果、自分と上司の時間を必要以上に奪ってしまうことになるのだ。
「それなら最初に余裕を持った日程を回答すればいいだけでは?」という声も聞こえてきそうだ。確かにゴールを余裕を持った日時に自由に設定できるタスクであれば問題ない。ところがタスクの中には、会社全体で期日が決まっている場合もあるので、すべてのゴールを自分の裁量で決めるというわけにもいかないのが現実である。そんな時、より高い精度の見積をより早いタイミングで回答できるのは大事だ。それを可能にするのがロケットスタートのメリットのひとつだろう。
一方で、流しの期間を設けるというのも確かに非常に大切だ。この社会は悲しいことに、優秀な人ほど潰れやすい環境になっている気がする。優秀な人は他の人よりも早く仕事を片付けることができ、それを見た周りの人間がさらにタスクを突っ込んでくるからだ。「何を甘いことを。優秀なんだからバリバリやらせてなんぼだろ。」という考えもあるだろう。だが度重なるタスクの積み重ねで疲弊しまって、生産性が下ってしまっては本末転倒だろう。それよりは、少し余力を残す程度の状態をキープし続ける方が、結果的に生産性が高いのかも知れない。
②仕事で集中力を持たされてはいけない
前述のロケットスタートをはじめとして、中島氏は集中力の割り振り方をメインに説いているが、それでもなお「集中力が持続しない」と悩む人も多いだろう。そういった人に対して中島氏は「仕事そのものを変えるべき」とバッサリ切っている。そもそもその仕事をこなすために集中力を自然に出すことができず、頑張って絞り出している時点で間違っているというのだ。本当に自分に合っている仕事ならば、たとえ頼まれていなくても自分から喜んで残業するほど楽しいはず。時間術の話から一転してこの天職の考え方を読んだ自分にとっては、そこそこ衝撃な内容だった。集中力を頑張って鍛えるのではなく、そもそも集中力を持たされているのが誤りであることに気づく。自分に合った職業を探す時、スキルが一致しているか否かとか、環境がいいかどうか等、色々と考える軸はあるだろう。それに加えて、「何も考えなくてもそれに集中力が自然と発揮できるかどうか」ということも、一つの基準にしてみると面白いのかもしれない。めっちゃくちゃ難しそうだけど。
終わりに
中島氏はwindows95の開発者であり、ドラッグ&ドロップと右クリックをこの世で初めて実装したトンデモ超人だが、実はその存在を知ったのは堀江氏が「投資のことなら中島さんのメルマガを読め」とメディア上で発言した時だ。そんな伝説のプログラマーの時間術を書籍で学べるなんて、コスパ最高のいい時代である。次々と降り掛かってくるタスクをスルスルと片付けて、自分のやりたいことや学びたいことにもっと時間を費やしたいものだ。
それでは。